「相続税の制度」に関するお役立ち情報
相続税の配偶者控除とは
1 1億6000万円まで相続税がかからない
一定以上の遺産がある場合は、相続税を納める義務がありますが、亡くなった方の配偶者が遺産を取得した場合は、1億6000万円または法定相続分の相当額のうち、どちらか高い金額まで相続税がかかりません。
例えば、遺産が1億円あり、これを長男が全て相続した場合には相続税がかかりますが、配偶者が全遺産を相続した場合は、相続税がかからないということになります。
参考リンク:国税庁・配偶者の税額の軽減
2 配偶者控除という制度がある理由
⑴ 財産への貢献を考慮
夫婦は、協力して財産を築き上げたと言えることが多いかと思います。
つまり、亡くなった方の遺産は、その配偶者の貢献によって築かれた財産の一部といえるため、子や親などの他の相続人が遺産を取得した時より、優遇する必要があると考えられています。
⑵ 配偶者の生活を守る
夫婦は、近い年齢の方が比較的多数派を占めています。
例えば、90歳の夫が亡くなり、同じく90歳の妻に多額の相続税が課せられるとしたら、妻は今後の生活が難しくなるかもしれません。
そこで、配偶者の老後の生活を守る必要があるとの考えが、配偶者控除に反映されています。
⑶ 短期間での課税回避
高齢のご夫婦の場合、比較的短期間で次の相続が発生してしまうことが考えられます。
例えば、夫が亡くなった2年後に妻が亡くなった場合、短い期間に2回相続税が課税されることになります。
そうなることを防ぐためには、1回目の相続で税金を軽くする必要があります。
3 配偶者控除を使うための条件
⑴ 法律上の夫婦であること
配偶者控除を使うことができるのは、法律上の夫婦だけです。
つまり、婚姻届けを市区町村に提出をしていないと、配偶者控除を使うことはできません。
例えば事実婚など、内縁関係の方が遺産を相続した場合には、配偶者控除は使うことができないため注意が必要です。
⑵ 遺産分割が完了していること
相続税申告をするまでに、遺産の分け方が決まっている必要があります。
万が一遺産の分け方が決まらないまま、申告期限が来てしまうという場合には、いったんは法定相続分で遺産を取得したものとして申告をすることになります。
その際に、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておくと、実際に遺産の分け方が決まった後に、配偶者控除の適用を受けることができるようになります。
⑶ 相続税申告を行うこと
意外と見逃されがちですが、配偶者控除を使う場合は、相続税申告をする必要があります。
相続税申告は、原則として相続税が発生する場合に行うものです。
そのため、各種控除などを利用して相続税がかからなくなるのであれば、申告も行う必要がなくなることが通常です。
しかし、配偶者控除など、一部の控除は、申告することが適用の条件となっているため、控除の利用によって相続税がかからなくなったとしても、相続税申告を行う必要があります。
例えば、遺産が1億円で、全財産を配偶者が相続することになったとしても、そのままでは配偶者控除は使えません。
相続税申告をして、配偶者控除を使う旨を申請する必要があるのです。
面積の広い土地を相続した場合の相続税 相続税における小規模宅地等の特例とは